【元徴税吏員が解説】住民税の延滞金の計算方法|いつから発生?いくらかかる?

納税

「住民税を滞納したら延滞金がかかると聞いたけれど、いつから?いくらになるの?」
そんな疑問を持つ方は少なくありません。この記事では、徴税吏員としての経験をもとに 延滞金の仕組みと計算方法 を分かりやすく解説します。


延滞金とは?

延滞金とは、住民税などを納期限までに納めなかった場合に発生する「利息」のようなものです。
一度発生してしまうと、税金と全く同じ扱いで請求されます。そのため、納期限が過ぎてから本来の税金(本税といいます。)が納付されても、延滞金が残っていた場合は差押えなどの滞納処分の対象とされることがあります。
申告時に確定する法定納期限の翌日から発生するものもありますが、ここでは一般的な住民税をベースに説明します。
延滞金の計算方法は地方税法で定められています。

延滞金が発生する目的は、

  • 滞納を防止するためのペナルティ的な意味合い
  • 納期限を守って納付した人との公平性を保つため

です。


そのため、分割納付の約束を交わしたとしても延滞金が止まったり無くなったりすることはありません


    延滞金はいつから発生する?

    延滞金は「納期限の翌日」から自動的に発生します。
    例えば、6月30日が納期限なら、7月1日から延滞金が加算されていきます。納期限が過ぎると督促状が送付されてきますが、その段階で既に計算が始まっているということです。

    ただし、延滞金には 端数処理のルール があり、

    • 1000円未満は切り捨て
    • 1000円に到達すると発生し、以降は100円単位で加算

    となります。
    つまり、納期が過ぎても延滞金が数百円にとどまっている段階では請求されませんので、督促状の納付期限を守れば、ほとんどの場合は延滞金は発生していないと考えて大丈夫かと思います。

    また、よく勘違いされている方がいますが、延滞金に対して延滞金は発生しません。本税を納め切れば延滞金の計算は止まります。 逆にいうと、分割納付で本税が減っていても、本税が少しでも残っていれば、残っている本税に対して延滞金が計算され続けます(もちろん延滞金の増えるペースは下がります。)。

    実務体験例
    納付期限を忘れていて、「少しくらい遅れても大丈夫だろう」と思っていた方が、数か月後にまとめて納めに来た際に延滞金が一気に増えていて驚いていました。

    ※役所や地域の銀行窓口では納付の方法を口座振替にできます。納付期限に自動的に振替えされるため、納付のし忘れと無駄な延滞金の発生を防ぐことができます。


    延滞金の計算方法(概要)

    延滞金は「未納の本税額 × 利率 × 延滞日数 ÷ 365」で計算します。
    納期限を過ぎると、延滞金は毎日この計算で積み上がっていきます。

    延滞金の利率(令和7年の場合)

    • 納期限から1か月以内:原則 2.4%
    • 1か月を超える部分:原則 8.7%(ただし金融情勢により変動)

    ※実際の利率は毎年見直されます。


    計算例

    例1:10万円を30日遅れで納付

    • 納期限:6月30日
    • 納付日:7月30日(30日遅れ)
    • 延滞金:100,000円 × 2.4% × 30 ÷ 365 ≒ 197円
    • → 1000円未満のため延滞金は請求されません

    例2:20万円を75日遅れで納付(延滞金が1000円を超えるケース)

    • 納期限:6月30日
    • 納付日:9月13日(75日遅れ)
    • 前30日間は 2.4%、残り45日間は 8.7%で計算
    • 延滞金:
    • 200,000円 × 2.4% × 30 ÷ 365 = 約394円
    • 200,000円 × 8.7% × 45 ÷ 365 = 約2,146円
    • 合計 ≒ 2,540円
    • → このケースでは延滞金が1000円を超えるため、2,500円(100円単位切捨て) が請求されます

    例3:50万円を100日遅れで納付

    • 納期限:6月30日
    • 納付日:10月8日(100日遅れ)
    • 前30日間は 2.4%、残り70日間は 8.7%で計算
    • 延滞金:
    • 500,000円 × 2.4% × 30 ÷ 365 = 約986円
    • 500,000円 × 8.7% × 70 ÷ 365 = 約8,342円
    • 合計 ≒ 9,300円
    • → 1000円以上のため延滞金が発生し、9,300円 が請求されます

    注意点

    • 少額でも延滞金は自動で計算される
    • 1000円に達するまで請求されないが、放置すると以降は100円単位で加算されていく
    • 長期滞納になると延滞金がどんどん膨らむ
    • 「延滞金だけ免除してほしい」という相談は基本的に不可
    • ただし、災害・病気・倒産など特別な事情がある場合は減免制度あり

    実務体験例
    分割納付の計画を、本税を優先して納付するようにできれば延滞金の発生を最小限にすることができます。私は実務上、分割納付の相談があった時は最終的な負担が少なくて済むような納付の順番にしていました。役所に分割納付の相談をすれば基本的には柔軟に対応されるでしょう。


    延滞金を減らす・回避するには?

    1. できるだけ早く納付する
    2. 納付が難しい場合は役所に相談(分納・猶予)
    3. 絶対に放置しない(延滞金が膨らむ一方です)

    まとめ

    • 延滞金は納期限の翌日から発生する
    • 分割納付の約束をしても、完納するまで延滞金は発生し続ける
    • 1000円未満は切り捨て、以降100円単位で加算される
    • 計算式は「本税 × 利率 × 日数 ÷ 365」
    • 短期なら少額でも、長期滞納だと数万円に膨らむこともある
    • 原則免除はされないが、特別な事情があれば減免の可能性あり
    • 迷ったら早めに役所に相談するのが一番の解決策

    👉 延滞金が気になる方は、まず「役所への相談」から始めましょう。

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