【元徴税吏員が解説】住民税を分納にできる?相談の流れと注意点

納税

はじめに

「住民税を一括で払えない…分割して払うことはできる?」
「相談したいけど、知り合いに滞納を知られたくない…」

こうした不安を持つ方は少なくありません。
結論から言えば、分納(分割納付)は可能です。そして、ほとんどの場合相談先である役所もプライバシーに配慮してくれる場合があります。この記事では、分納の仕組みや流れ、安心して相談するためのポイントを解説します。

👉 差押えの全体像を知りたい方は、【元徴税吏員が解説】差押え対象財産まとめ|給与・預金・不動産・保険の優先度と注意点 も参考にしてください。


分納が認められる条件

  • 一括納付が経済的に困難であること
  • 納付する意思があること
  • 今後の収入や生活状況に応じて「現実的な計画」が立てられること

※その場しのぎの「払う気はないけど分納にしてほしい」という姿勢では認められません。


相談の流れ

1. 役所に連絡する

督促状、催告書が届いたら、絶対に放置せず連絡先にある担当課(徴税担当)に電話しましょう。
電話では「一括では払えないので相談をしたい」と伝えます。
税額や状況によってはこの電話だけで話がまとまることもあります。
相談日の設定や、当日に収支状況の分かる資料を持参するように話があります、後で説明しますが、捺印を求められることもあるので念のためハンコも持参したほうが良いでしょう。
相談しているところを人に見られたくない場合は、その話もこのタイミングでしておくと良いでしょう。
また、役所は平日しか対応できないところが多いので、お仕事をされている方は事前に仕事を抜け出せる日を見つけておく方が良いでしょう。どうしても役所に行けない場合は、委任状があればご家族の方などでもご本人と同じ扱いで相談できる場合もあります。ですが、原則はご本人が行けるようにした方が良いでしょう(役所によっては休日対応可能なところもあります。)。

👉 督促から差押えに至る流れは、【元徴税吏員が解説】督促から差押えまでの流れ で詳しく解説しています。

2. 面談で事情を説明

相談窓口では、以下を聞かれることが多いです:

  • 納められない理由・原因は何か
  • 収入の状況(毎月の給与・ボーナス・年金支給額など)
  • 支出の状況(家賃・生活費・通院費・養育費など)
  • 今後の収支見込み(まとまったお金が入る予定がある・突発的な支払いがあるなど)

実務体験談

職員が知りたいのは、あなたが納税できない理由(原因)と、生活に欠かせない支出がいくらで、収入から毎月いくらまで納付が可能かという点です。
しっかり情報の整理がされていなかったために計画をまとめられず、相談を中断させてもらうこともありました。
可能な限り終始の裏付けとなる資料を用意し、不足している情報はメモして行きましょう。

3. プライバシーへの配慮

「滞納していることを他人に知られたくない」という声は非常に多いです。
役所内で知り合いに見られるかもしれないことや、職員自体に知り合いがいるようなことを理由にして行動に起こせない人もいます。
そんな時は、事前に相談してもらえればカウンター越しではなく、人目のつかない個室や個別ブースで対応してもらえるケースがあります。
滞納は決して特別なことではなく、役所としても相談者の事情に配慮する体制を整えています。
当然相談された内容についても守秘義務がありますので、個人情報は守られます。安心して相談してください。

👉プライバシー対策については、【元徴税吏員が解説】住民税滞納は家族や職場に知られる?相談時のプライバシー対策と注意点で詳しく解説しています。

4. 分納計画をつくる

あなたの収支状況が把握できたら、職員と一緒に「いくらずつなら納められるか」を決めます。

よくある分納計画のパターンは以下のようなものがあります

  • 滞納している税金を分納し、これから納期を迎える税金は期限を守って納付していく
  • 2ヶ月間分割納付し、3ヶ月目にボーナスで一括納付する
  • これから納期を迎える税金にまわすお金を含めて滞納している税金を優先して分納する
  • (すぐに計画をまとめられない場合)ある程度の金額で数ヶ月様子を見て、その間に分納金額を増額できるように生活を改善し、改めて分納計画をまとめ直す

納付の計画は相談者の現状や、自治体の考え方によってまちまちですが、滞納を解消できないような少額での分割納付は認められません。完納できない計画では職員側からすると滞納することを認めてしまうことと同義になるからです。
収支状況によっては生活の改善を求められることもあります。

👉 話がまとまっても延滞金は発生し続けますから、早期に完結し、最終的なお金の負担が少なくなるような分納計画をまとめましょう。また、新たに納期限を過ぎた税金にも督促状が発送されてきます(法律で決まっています。)。

5. 分納誓約書の作成

分納計画がまとまると、「分納誓約書」への署名・捺印が求められる場合があります。

この誓約書には以下のようなことが書かれています。

  • 滞納している税金が自分が納めるべき税金であることを認識すること
  • 分納計画を守り、誠意を持って納付していくこと
  • 計画どおりに納付をしない場合は、滞納処分を受けても異議がないこと

役所によって少しレイアウトは違うと思いますが、概ね似たようなことが書かれているでしょう。
署名を拒否することもできますが、約束を破ったら差押えなどの滞納処分を受けることには変わりがありませんので、納付していく意思を示す意味でも署名しておいた方が良いでしょう。
認印でも良いのでハンコも持参するようにしましょう。


実務体験談

「給料が下がってしまってどうしても払えない」という相談を受け、月1万円ずつの分納計画を立てました。
その方は「役所に知り合いがいて相談しづらい」と不安にされていましたが、個室対応を選び、周囲に知られることなく相談できました。結果、誠実に支払ってくださり、差押えを回避できたケースがあります。


分納の注意点

  1. 必ず計画どおりに納付すること
    • 途中で滞ると「約束を守らない」と判断され、差押えに直結します。
  2. 無理のない額を設定すること
    • 高額を約束して納められなくなるより、誠実に約束を守って納める方が信頼されます。完納できる金額での分納は最低条件ですが、現実的な分納金額になるようにしましょう。
  3. 延滞金は発生し続ける
    • 分納にしても延滞金は止まりません。最終的には余計に納めることになります。ただし、分納が進めば延滞金が増えるペースは徐々に下がっていきます。

👉 延滞金の仕組みは、元徴税吏員が解説】住民税の延滞金の計算方法|いつから発生?いくらかかる? にまとめています。


どうしても払えない場合

  • 分納計画どおりに納付できない時は、放置せず速やかに役所に相談しましょう。
  • 生活困窮や病気など特別な事情がある場合は「徴収猶予」や「減免申請」が可能です。
  • その際は証明書(診断書・給与明細など)が必要となるケースがあります。

まとめ

  • 住民税は相談すれば分納可能
  • 役所はプライバシーに配慮し、人目につかない場所で相談できるケースもある
  • 分納には「誠実に払う姿勢」と「現実的な計画」が必要
  • 途中で滞ると差押えのリスクが高まる
  • 延滞金は発生するので、できるだけ早期に完済を目指すのがベスト

👉 不安を抱えている方こそ、一人で悩まず、まずは役所に相談してみましょう。


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